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でっかいことに焦点を

【16004】感想。小説「漂流」。吉村昭著。

知人に紹介されて読んだ小説。

江戸時代18世紀に土佐の国(高知)の猟師が遭難して鳥島にたどり着き、そこで壮絶な生活を送り、何とか帰還しようとする様を克明に描いた小説。

 

江戸時代の記録から起こした小説らしいが本当に見てきたような、いや、実感したんじゃないかと思わせる描写。

風景の描写も生存のキーになったアホウドリの生態から人と人がいがみ合う心理描写まで。

心理描写でいうと期待と裏切られが続きどんどんぼろぼろになっていく様。

具体的にはたとえば、渡り鳥であるアホウドリの首に人が作った縄があることを発見し、その向こうの人に遭難して鳥島で何とか生きながらえている様を伝えようとしてアホウドリにメッセージを託す。

そのアホウドリが帰ってくるかどうかの顛末。

 

今出張で海外に3週間いるが、遠いところにいると思っていた自分が恥ずかしくなるくらいの鳥島の遠さ。やるせなさ。

 

途中の12年4ヶ月の描写が続き、何とか脱出するまでの勢いのある描写。

生きていることのすばらしさと生き続けることの厳しさ。

 

いい本を読んだ。

お勧めです!

 

 

 

漂流 (新潮文庫)

漂流 (新潮文庫)