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でっかいことに焦点を

100006: 森博嗣のミステリィ工作室

森 博嗣 著


森博嗣氏をご存知ですか?

知る人ぞ知る、といいたいところですが、結構有名なのかもしれません。

昔から,森博嗣氏は超人だということを著書や書評を読むことでうっすら知っていました。
例えば,某国立大学の助教授をしながら,小説一冊を1,2週間で書き上げ,
10年で100冊以上の著書を出版(したはず)。

それらの本も次々ベストセラーとなり,
昨年は「スカイ・クロラ」という著書を原作とした同名の映画が
押井守監督の手により映画化されました。

著書は,初期はミステリィですが,後半になるにつれもっと難解な(オチの無い)ものとなっています。

ただし,自分自身の事はほとんど書かれていません。
いや,毎日ブログを書かれていたが,
それを読めば読むほど本当の姿がつかめなくなります(というように書かれている)。

今回のこの本は,その森博嗣氏について,書かれたものです。

本が作られたタイミングは,S&Mシリーズという名前の
最初に書かれたミステリィ10作品が出版され,
初の短編集「まどろみ消去」,「地球儀のスライス」が出たあとです。

時期はキモになっている。

本の内容は,まずは森博嗣氏が影響を受けたミステリィ100冊が
書評(と森博嗣氏の感情)付きで挙げられています。
次に,自作の10冊+2冊についての後日談(読者に対するサービス)が書かれ,
最後に森博嗣氏の(ほんとうに)多面的なキャラクターがいくつかの視点から描かれている。


ミステリィ100冊の部分は,その書評全体がひとつの作品となっている。
読んでいる途中でどんどん感情が動き,
90冊目からは終わりが近づく寂しさと高揚感を感じ,
100冊目の書評を読み終えた瞬間に達成感を感じた。

こんな書評は見たことない。

自作について書かれた部分は,
ユーモアを意識されており,
「ププッ」となるところが多い。

このあたりは土屋賢二さんの感性と通じるものがあるが,
森博嗣氏のものはなんだろう。

うっかりすると見落としてしまう(というか見落としているものも多いハズ)
ナチュラルさ,それを切れ味と言い換えることもできると思うが,
そこにあるとおもう。



やはり森博嗣氏は天才だ。

そのことを痛感し,現状の自分と比較して少し切ない気持ちになる。

人との比較は意味がないし,滅多にしないが,
突きつけられるということはあるものだと思う。



なんとなく,切ない気持ちになった一冊。